お墓への埋葬に替わって注目されている新しい埋葬の形が海洋散骨です。
日本人の意識に深く根付いている「お墓」へ遺骨を納める埋葬は、日本で最も多く執り行われている埋葬方法で、ほとんどの日本人にとって親族や祖先の埋葬方法はお墓や納骨堂などへの納骨でした。
しかし核家族化、少子高齢化が進み先祖が眠る「墓」を維持することが難しくなり、各地で「無縁仏」が問題となっています。
こうした社会背景をもとに、新たな埋葬方法として「海洋散骨」が注目されてきています。
この記事では「海洋散骨」にあたって発生しがちなトラブルとその回避方法について、実際に多くの海洋散骨を執り行ってきた立場で実際に経験してきたことを解説します。
実際に経験した海洋散骨でのトラブル

私がこれまでご依頼を受けた中で実際に経験したトラブルです。
海洋散骨直前に一部遺族の反対でキャンセルに
故人の遺志によって子供たちが海洋散骨を申し込み、執り行う直前で故人の遠い親戚の強い反対意見がありキャンセルとなった事例がありました。
事前の相談の段階からご遺族での十分な話し合いをお勧めしていて、故人の子供さんたちは皆賛同をしていたのですが、話を聞きつけた故人のご兄弟が強く反対してきたそうです。
ご兄弟は十年以上音信不通だったので連絡しようがなかったということですが、遺族間で意見がまとまらなかったトラブルの一例です。
海洋散骨で遺骨を全て散骨して、後から遺族が不仲に
故人が生前から散骨を希望されていて、希望を聞いていたご遺族の依頼で散骨を執り行いました。
散骨後にご遺族の一人が「故人に思いを馳せるものがないのは寂しい」とおっしゃるようになりました。
散骨してしまうと全てのご遺骨が海に還りますので、思いをよせる対象がなくなってしまいます。
散骨自体は故人の意向をかなえたので後悔はないということですが、すこし寂しさが残るケースでした。
墓じまいで親族間が不仲に
墓を受け継いでいた墓守が墓じまいをして散骨したところ親戚と不仲になったケースです。
墓守の家族で話し合って墓じまいしたのですが、親族は墓を重視する人で「親族に相談もせずに勝手に墓じまいをした」と怒鳴り込んできたということです。
墓を継いでいる人が墓を維持する負担を負っていて自身と家族の判断で墓じまいをしても、親族にしてみると「墓参り」は故人を供養する重要な機会で、供養の場を奪われたという思いを抱くのも無理はありません。
墓じまいをする前に、十分に親族との話し合いがあればよかったかもしれません。
菩提寺に相談なく墓じまいをして散骨して法外な離檀料を請求される
お寺にとって檀家は大切な存在です。お寺を維持していくうえで檀家は不可欠な存在で墓じまいされて檀家が少なくなることは死活問題でもあります。
墓じまいをして納められていた遺骨を散骨したり、お墓に入らず散骨をしたりするなどは菩提寺にとってはいい話ではありません。
長年の付き合いがある菩提寺に相談もなく海洋散骨を決めてしまったため、住職との関係が悪化し高額な離檀料を請求されたというケースがありました。
生前に予約した散骨業者が倒産
生前から予約して前金も入金していた散骨業者が倒産し返金もされなかったケースがありました。
きちんとした業者であれば、他の業者へ引き継ぎするなり返金対応をとるのですが、一部には適切な対応をとらない業者もいます。
入金するまえに業者とやりとりをして疑問点を解消し、入金する場合は返金の有無と条件を確認しておきましょう。
散骨は故人が海に還る厳粛な儀式ですので、信頼できる業者かを見極める必要があります。
海洋散骨でのトラブルを回避する方法

海洋散骨をするまえに家族で十分な話し合いをする
海洋散骨は新しい埋葬方法でまだ広く理解が得られた供養の方法ではありません。
海洋散骨への考え方は人それぞれなので、遺族や関係する人と事前に十分に話し合いをすることが大切です。
故人が希望していた場合は、遺書などの客観的な記録に残してもらっておくことが重要です。
菩提寺には丁寧に説明をする
長年の付き合いがある菩提寺とは良好な関係を維持したいですね。
しかし散骨をするということは、菩提寺が管理するお墓が減りひいては檀家が少なくなる原因にもなります。
このため、菩提寺には丁寧に説明をして、散骨をする場合でもすでに納骨されている他のご遺骨は残して菩提寺の関係を維持したり、ご遺骨をすべて散骨する場合は菩提寺への離壇料を支払うなど関係が悪化しないような対応が必要です。
信頼できる散骨業者を選ぶ
安全・安心な散骨をするためには信頼できる業者を選ぶことが肝心です。
HPを確認して散骨の実績や取引先、顧客の感想などを確認して業者を選び、注文する前に納得いくまで質問をして、対応もしっかり判断してください。
また、倒産などで散骨が実施されない場合の返金方法も確認しておいてください。
全ての遺骨を散骨せずに一部を手元供養に
全てのご遺骨を海洋散骨をしてしまうと、故人の身体は全て手元に残らなくなります。
このためお参りしたりする対象がなくなってしまい「思いをよせることができなくなる」という声も聞かれます。
海洋散骨をするとお墓などの維持管理の負担から解放されますが、故人に思いを馳せる対象はなくなるので遺骨の一部を手元供養などで残しておくという方法もあります。
海洋散骨をする前に、全てのご遺骨を散骨するのか、それとも手元供養として一部を残すのかも話し合っておくことも必要です。
海洋散骨で起きやすいトラブルと避けるための方法 まとめ
散骨後に遺族や関係者から不平や不満の声がでた → 散骨前に十分に話し合いを
散骨で菩提寺との関係が悪化 → 早くから相談して円満で散骨や墓じまいを
業者とのトラブル → 事前に業者をよく調べて、発注前にやりとりをして信頼できる業者選びを
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